注意:
以前フォーラムに置いていたお話です。初めて書いたものなので、とてもおかしな文章になっているかもしれませんが、そこは広い心で想像力を働かせてお読みください。
作者の謎な妄想爆発ですが、表現するのは難しいですね。

----------

どうしてこうなってしまったのか…。
今、僕は暗くて苦しいところにいる。周りからは様々な音が聞こえるけど、どれも異様な音ばかり。
もう叫ぶ気力もない。初めは熱かったし、痛みもあったけど、もう感じない。
意識もぼーっとしてきた。動くこともできない。
もう、駄目かもしれない。もともと、助かる見込みはなかったんだろうけどさ。

走馬灯のように今日の出来事が蘇ってきた。

----------

その日は夏の真っただ中。世間は夏休みだなんだと浮かれている。
僕はちょうど仕事をクビになったところだった。
今まで一生懸命会社のために働いてきたのに、理不尽なことこの上ない。
不景気の時代、会社にとっては仕方ないのかもしれないけど、僕は明日からどうやって生きていけばいいのか…。
「はぁ…」
ため息ばかりでてしまう。
あの時こうしていればよかったのかな、とか、あれが駄目だったのかな、とか。色々なことを考えるけど、どれもネガティブなことばかりだ。どうしても前向きになれない。
家に帰る途中、公園で元気に走り回る子供達をみた。まだ小学生だろうか。
「あの頃は遊びが仕事みたいなもんで、毎日が楽しかったなぁ。いつのまにか大人になっちゃって、今は無職…か」
もう一つため息がでる。できることならあの頃に戻りたい。生まれ変わってやり直したいな、なんて。
人生にリセットボタンはない。そんなことはわかってるけど。
「休んでいこ…」
誰にいうでもなく独り言を言ってみる。独り言が出るってまずいんだっけ?僕はもう駄目かもしれない。

公園のベンチに腰掛ける。目の前には無邪気に遊ぶ小学生たち。こんな暑いのに本当に元気だ。
鬼ごっこをしている男の子。鉄棒で遊んでる女の子。
他にも、みんな友達と思い思いの方法で遊んでいる。僕はと言えば、毎日仕事仕事で友達というものはいつの間にかいなくなっていた。会社の中では競争で、周りはみんなライバル。心を許せる相手なんていなかった。
それにしても、暑い。暑すぎる。近くにソフトクリームを売ってるワゴン車を見つけた。子供みたいにソフトクリームを買って食べるのもいいかもしれない。
でもなんか、疲れた。僕はいつのまにか、公園のベンチで眠りに落ちていた。

----------

夢を見ていた。普段夢なんて見ないのに、本当に疲れているんだな、って自己分析してみる。根拠はないけど。
「ちょっとちょっと、そこの君」
突然声をかけられた。
「やぁ、私は神だよ」
突然の自己紹介。そこにはへんなコスプレおっさんがいた。神様だって?神様なんて信じてないのに、なんで僕の夢に出てくるんだろう。
「はぁ…神様ですか。神様が僕なんかになんの御用ですか?」
夢なんてよくわからないものだし、久しぶりにみた夢だから少し付き合ってみるかな。
「いやね、今回天の宝くじにたまたま君が当たってね。なんでも願いがかなっちゃうことになったんだよ」
すごく詐欺師っぽい…。
「天の宝くじ、ですか。大金でももらえるんですか?」
「ああ、もちろん!君がそう願うならね。でももったいないよ~、お金なんて。下界の宝くじでももらえるでしょ~。君がどうしてもっていうならいいけど、私はお勧めしないよ」
なんでも叶う…。そんなこと起こるとは思えないけど。どうせ夢だし、夢のあることを言ってもいいよね。
「じゃあ…子供時代に戻りたい。子供に生まれ変わりたい」
「ふむ。子供にね。男の子、女の子?」
どういう質問だ。意味がわからない。
「女の子にもなれるの?」
「うん。もちろんさ~。女の子はいいよね~、女の子になってみる?」
「じゃあ、女の子で…」
どうせ夢だしなぁ。
「OK!どの娘がいいかなぁ。なんか希望ある?」
希望って…、なんかここだけ聞くと犯罪のような気もするぞ。
「なんでもいいよ」
「なんでもねぇ。まぁ、せっかくだし私の独断と偏見で、できるだけかわいい娘にしてあげよう。うーん、ちょっとまってね」
なんだか下のほうをじっと見つめている。下に何かあるのだろうか。
「よし、いい娘発見!ちなみにもう取り消しはできないからね。じゃあいくよ~。うぬぬぬぬ」
なんか神様がうぬぬぬぬ言い出した。ますます詐欺師臭い。
「ぬぬぬぬぬぬ」
なんだか体が変な感じだ。なかなかリアルな夢だなぁ。
「かっ!」
あれ?意識が…夢なのに…?
「いってらっしゃ~い」

----------

「う、寒っ」
夢から覚めたと思ったら、なんだかとても寒い。夜になっちゃったのかな。
でもすぐに異変に気がついた。身動きがとれないし、なんかとても甘ったるい匂い。
目を開けるけど何も見えない。いったいどこだここは?巨大な冷蔵庫か?
「おーい!だれかぁ!」
叫んでも何も変わらない。これも夢の続きなのか?変な夢だなぁ。
それにしても寒い。夢なのにこんな寒く感じるのか?夏だったのにいきなり真冬になった気分だよ。
なんとか動こうともぞもぞしていたけど、やっぱり動けなくて。半ば諦めかけていたその時だった。

グラグラグラ

突然の揺れ、そして下に落ちる感覚。
「な、なんだ!?」
僕は身動きがとれないまま、ただ流れに身を任せるしかなかった。
そして、周りが明るくなった。

ムニュー

僕は僕の周りを覆う何かとともに、ゆっくりと落下していった。
一体なんだっていうんだ。周りは相変わらず寒いけど、さっきよりは明るい。状況が変わったのかもしれない。
試しに体を動かしてる。周りの壁がさっきよりちょっとだけ柔らかくなってたみたいで、多少腕を動かすことができた。
手を使って顔の前にある壁に穴を開けてみる。
「どこだ…ここは」
壁に開けた穴からは外の景色をみることができた。でもそこは全く見覚えがないところで。いや、見覚えがないんじゃない。何かとても違和感がある。
何か器械が並んでいる。奥には扇風機みたいなものやレジらしきものなんかも見える。
でも、その全てが大きい。もしかしたら目の錯覚かもしれないけど。距離感がとても変だ。巨人の国にでも迷い込んでしまったのか?
「うわっ!?」
そんなことを考えていたら、また僕のいる空間全体が移動を始めた。すごい加速度を感じる。これはエレベーターとかじゃない!

「はい、150円ね」

突然大きな男の声。誰か、誰かいるのか?
「おおい、誰かいるのか?誰か助けてくれ!」
しかし、声の主はまるで気づかないように僕に返事はしてくれない。

「ありがとう~。」

今度は女の子の声だ。なんで誰も僕に気がつかない!
僕を閉じ込めている異様な空間は、さらに移動をしているみたいで、ちょっと気持ち悪くなってきた。
それからも、動いたり止まったり。もうなんか動きも一定していない。本当に吐きそうかも…。そう思っていたら、運よく揺れは収まった。

「今日は本当に暑いね」
「ほんとにね」

違う女の子の声も聞こえる。しかもかなり大きい。
近くにいるはずなのに、僕の声はちっとも届かない。

「早く食べないと溶けちゃうよ!」
「だよね、食べよ食べよ」

そんなことより僕に気がついて!頼む。
また空間が移動を開始する。いい加減慣れてきた僕は、開いていた穴から外を見ようと顔を近づけた。

ムニュ

!?

開いていたはずの穴は突然何かに塞がれた。柔らかい何かが僕の顔をぐっと押しつける。

ズズズズズ

その柔らかい何かが上に向かって移動する。僕の目の前にあった壁を削り取っていく。
さっきまで指くらいしかなかった穴が、大きく開いていた。
僕の顔に纏わりついていた何かネバついたものを取り払って外の景色に目をやる。
「!!!!」
外には異様な光景が広がっていた。目の前には大きなピンク色の皺。でもそれが何かはなんとなくわかった。
信じられないけど…大きな唇だ!
唖然としていると、その唇が離れていく。正確にはこっちが離れていっているんだろうけど。
それに伴って顔全体が見えてきた。
目の前にいたのは、たぶんだけどさっき鉄棒で遊んでいた少女だ。きれいな顔立ち。でもあどけなさの残る少女。
将来美人になりそうだ。ってそんなこと考えている場合ではない。
さっきから感じていたこの甘ったるい感じ。もしかして…。
壁の一部をなめてみる。…これは間違いなくソフトクリームだった。

「おいしぃ~」

女の子の声が聞こえると同時に生温かい風が顔にかかる。目の前の大きな唇が動く。太陽に照らされて真っ白い綺麗な大きい歯が見えた。
僕は何か嫌な冷や汗が出ているのを感じながら、今の状況を冷静に、しかし素早く分析することにした。
まず、今僕がいるとこは、おそらくソフトクリームの中だ。それも巨大な。
なんでこうなってしまったかはわからないが、練りこまれてしまったらしい。
目の前の大きな女の子が舐めとってくれたおかげで外の景色はよく見えるけど、体の半分はまだソフトクリームに埋もれていて身動きが取れない。
さっきの大きなレジや扇風機を見るに、僕のほうが縮んでいるのかもしれない。
僕はどれくらい小さいのか…。

「あ~ん」

前からまた生温かい風が吹いてくる。目をやると、そこには巨大な唇がぱっくりと開き、中からモンスターのような巨大なピンク色の物体がせせり出てくるところだった。
「う、うわぁぁぁぁあ」
必死に叫ぶが、誰も気づいてくれない。
大きな舌がだんだんと近づいてくる。とても巨大だ。大きすぎて視界に収まらない!

ベロン

巨大な舌は僕を舐めとることはせず、僕の右側にそれた。右側の表面が削り取られていく。
危なかった。万が一にでも、あの舌に張り付いてしまったら、もう生きて出ることはできないだろう。今のままでも脱出できるかどうかわからないけど。
それにしても大きすぎた。おそらく今の僕は米粒一つよりも小さいんじゃないだろうか。一体どうすればいいんだ。
運よく下半身が自由になったとしてどうする?飛び降りるにしても今の僕じゃあ高すぎる。
かといって、このままじっとしていればいつかはこの娘に舐めとられてお腹の中。
一か八か、女の子の指を伝って耳に侵入し、大声で叫べば気づいてくれるかもしれない。そんなこと、本当にできるのか…?でもこの大きさで気づいてもらうにはその方法しか思いつかない。

ベロン

考えている間にも、色々な方面の壁が女の子に削りとられていた。
時々僕のいるほうも舐めてきたけど、その時はなんとか踏ん張って舐めとられないように耐えた。その度に顔は女の子の唾でベトベトになったけど。
でもそろそろ危険かもしれない。ソフトクリームも小さくなってきたし。次が来たら食べられちゃうかも…。

「ああ、だんだん溶けてきちゃった」
「早く食べないとだね」
「そうだね~。ソフトクリームは垂れてきちゃのがいやだよね」
「うんうん」

二人の女の子が他愛ない会話を繰り広げている。その手のソフトクリームの中で必死にもがいている僕。
女の子たちは宣言通り、すごい勢いで舐めはじめた。
「うわっ」
さっきより少々乱暴に扱っているせいか、すごく揺れる。でも周りのソフトクリームも溶けてきたのか、僕の下半身も自由になってきた。
身を乗り出して下をみる。女の子のソフトクリームをもつ指が見える。
不幸中の幸いか、今はちょうど僕の背面を必死に舐めているみたいだ。今のうちならなんとか指までたどり着けるかもしれない。
僕はこの空間から脱出し、恐る恐るソフトクリームの壁を降りはじめた。
ソフトクリームは僕の体重もあってか、ちょうどいい粘度でゆっくりと僕を下に運んでくれる。ついにソフトクリームの領域も終わり、コーンの領域に差し掛かった。

「あ、垂れてるっ垂れてるよっ!」

もう一人の女の子が叫んだ。その目は完全に僕のほうを向いている。なんかとても嫌な予感がする。

「えっ!うそっ!」

突然景色が動き出す。それと同時にすごい遠心力を感じる。不幸中の幸いか、いや、やっぱり不幸なのか。ソフトクリームのおかげでふっ飛ばされなくて済んだ。
動きが止まった。目の前にはこのソフトクリームの持ち主。

「あ、ほんとだ」

唇が大きく開かれる。白い綺麗な歯と、その奥の暗闇。
生温かい風を感じる。それとともに暗闇から大きな舌がぬっと出てくる。
舌はぐんぐんこちらに近づいてくる。舌の表面のぶつぶつまではっきり見える。
舌の表面が押しつけられる。ネバネバの唾液が僕の体全体にくっつくのを感じる。
僕とその周りのソフトクリームが女の子の舌に沈む。
そして…

ベロン

突然の上昇。さっきまで僕を幽閉していたソフトクリームからついに僕は別れを告げた、そして、新しい幽閉場所へと運ばれていく。
唇を通過する。女の子の口の中に収まっていく。
歯を通過する。取り残されたソフトクリームがちょっとだけ上顎に張り付いている。
舌が完全に収まる。女の子の口の中、ソフトクリームのにおいに混じって独特なにおいを感じる。
口が閉じていく。と同時に上顎が迫ってくる。
「ああ、このまま飲み込まれるんだな…」
上顎と舌の間に挟まれる。僕とソフトクリームは舌に押されて喉の方へと追いやられていく。
舌の表面がぶつぶつしてくる。かなり奥まで連れてこられたみたいだ。
舌が大きく揺れる。僕は突然圧力から解放された。

飲み込まれる!?

そう思った。しかし…。

ゴクン

呑まれたのは僕と行動をともにしてきたソフトクリームだけだった。
僕はというと、喉の奥、咽頭後壁の粘膜に貼り付いていた…。
「まだチャンスはあるって…ことなのかな。ハハハ。でも笑っちゃうよなぁ」
大の大人が小さくされて、女の子の咽の奥に貼りついているなんて。
プラスにとらえれば、もしかしたら女の子が咳をしてくれたら、ここからは脱出できると思うけど。
でもそのまま外に出れたとしても、次は地面にキスするしかなさそうだし。
どうしろっていうんだろう。
いや、まぁ小さくなった時点で、運命なんて決まっていたようなもんだったのかもしれない。
諦めなければなんとかなる、なんて昔言われたけど、この状況はもう…。

女の子の口が開く。大きな舌、大きな歯、広大なピンクの粘膜。天井と舌の間にはいくつもの柱が立っている。
開かれた入口からは外の景色が見える。なつかしい、ちょっと疲れた心を癒すために立ち寄った公園が見える。
さっきまではあっち側にいたのにな…。
そんな入口から、次なる客が入ってきた。
次なる客は、残りのソフトクリーム全部だった。
もう溶けかけていたソフトクリームを一口で食べてしまうみたい。
コーンが舌に乗ると同時に、唇は固く閉じ、暗闇が訪れた。

クシャ、クシャ、クシャ

僕の耳にはコーンを奥歯で噛みつぶす音が聞こえてくる。とても生々しい。そして怖い。

クチャ、クチャ、クチャ

ソフトクリームと、粉々のコーンと、そして女の子の唾液が混じった色々なものが、その狭くて広い空間でかき混ぜられている。

………

音がやんだ。そろそろ終焉が近付いている。
何かが近付いてくる気配、ドロドロとしたソフトクリームだったものが、僕に触れ、その中に僕を取り込んでいく。
女の子の粘膜から引きはがされ、ソフトクリームだったものに戻されていく僕。
運命は決まった。

ゴクン

大きな一つの食塊は、ついに女の子の咽のさらに奥、食道に押し込まれた。
僕はこの塊の中で、強靭な筋肉の力を感じていた。こんな大きなものをお腹の中に運んで行くなんて、人はなんてすごいんだろう。

ドクン、ドクン

心臓の鼓動が聞こえる。ここは女の子の中なんだと、実感させられる。

ムニュ

ついに、僕と、その塊は食道と胃の境目を押し広げ、巨大な袋の中にその身を落とした。

ドボン

落ちた衝撃で塊はバラバラになり、僕は女の子の胃液の海へと放り出された。
そこはまさに地獄だった。臭いは強烈で、絶えずグルグルと何かの音が聞こえてくる。
それに合わせて胃液は波打ち、まるで荒れた海にいるみたいだった。
空気は当然のことながら薄くて、意識を失いそうになる。むしろ失ったら楽だったのかな。
「あつ、あつつつ」
でも、体が焼けるような痛みを僕に知らせてくるせいで、それを許してくれない。
米粒よりも小さい僕はあっという間に溶けちゃうのかなと思ったけど、胃液が何かで薄まっていたのか、一瞬で溶けるようなことはなかった。

----------

「……」
どれだけ時間がたったのだろうか。もしかしたら全然経っていないのかもしれない。
もう叫ぶこともできない、手足の感覚もなくなってきた。ただ女の子の蠕動に任せて、胃液の海をゆらゆらと漂うだけ。

どうしてこうなってしまったのか…。

脱出方法を誤ったのか
変な神が悪いのか
公園に立ち寄らなければよかったのか
そもそも、会社をクビになったのがそもそもの始まりなのか。

いや、たぶんあの神とかいうやつだな。あいつが原因だ。そんな気がする。やっぱり詐欺師だったんだなあいつ。

「詐欺師とは失敬な。ちゃんと夢をかなえてやっただろ。」
ふざけんな、どこも叶ってない。
「このまま順調にいけば、君はこの娘の一部として生まれ変われるんだぞ、よかったじゃないか。」
…ただの勘違い野郎だったのか。
「うん?まぁよかったね。それじゃ、この娘の体としてのライフを楽しんでね!ばいばーい」
ああ、もうどっかいってくれ。

それきり、もうあいつの声は聞こえてこなかった。

なんとなくだけど、僕の意識はそろそろ保てなくなる、そんな気がする。
まぁでも、ここまで来たのならしょうがないかな。僕の栄養を使って、いい娘さんになってもらうことを祈るしかないか。
それじゃ、次はちゃんと生まれ変わろう。今度は男の子で…。

一際大きな波が僕を襲う。そこで僕の意識は事切れた。


終?
----------

正直、疲れた…。
さらに女の子の一部になって、とかも書きたかったんだけど、どっかの海外小説みたいな展開だなって読み返して思っいました。
ここまで読んでくれた方、私の妄想にお付き合いくださり、ありがとうございました。