※注意※

1.主は物書きはド素人です。
2.「燃えないごみ」ならぬ「読めないゴミ」です。文脈、文法、口調、設定の乱れにより頭痛や吐き気、胸の違和感などの症状が起こる場合があります。
 その場合は直ちに読むのを取りやめ、ブラウザを閉じ、部屋の窓を開け新鮮な空気を吸入してください。
3.数年前とあるスレッドに途中までアップした作品を元に大幅に加筆修正を行い、まったくの別物になった作品がこちらになります。
4.この作品は「涼宮ハルヒ」シリーズの二次創作にあたります。そのため文を「涼宮ハルヒ」シリーズに似せております。
 原作の雰囲気等、再現しきれて居ない部分も大きく、「涼宮ハルヒ」シリーズが嫌いな方、原作こそ至高だと思っている方等は読むのを控えたほうがよろしいかと思います。




































 俺は今、ジメジメとした暑い空間に居る。
その壁面は常に形を変え蠢いており、ヌメヌメとした粘液と熱を放っている。
「うーん…」
俺の横ですやすやと寝息を立てていやがるのは、間違いなくこの状況を引き起こした元凶、涼宮ハルヒである。
おそらく流された時に気絶してしまったのであろうが、こんな状況で寝続けていられるとは見上げた神経の持ち主である。
一体どうしてこんな事になったのか、頭が痛くなるのを我慢しつつ状況を整理してみようと思う。



 事の発端は珍しくハルヒが長門の読んでいた本に興味を持った事だった。
いつもの放課後のSOS団の部室。小泉と朝比奈さんは用事だとかで、部室にはハルヒと俺、そして長門がいつものように読書をしていた。
「有希、あんた変わった本読んでるわね?」
そこで人間台風、歩くトラブルメーカーこと涼宮ハルヒが退屈に耐えかね動き出したのだ。
長門が変わった本を読んでるのはいつもの事だと思って気にもかけなかったが、
今思うとここで「長門の読書をあんまり邪魔するな」等と言ってハルヒの興味を逸らしておくべきだったのかもしれない。
「なになに?『驚異の小宇宙 人体』?」
「……人間の身体の構造を視覚的、文章的に表現した本。元々は教育番組だった物が、書籍化したもの…」
「へぇ……それって、面白いの?」
「……人間の身体の構造には、無駄が非常に多くある。……私には、それがとても興味深い」
「あら、文ばっかりかと思ったら挿絵や写真もあるのね!」
「……放映された番組ではコンピューター・グラフィックによる、視覚的なアプローチが多用されていた」
「八冊もあるのね…ヒマでヒマで死にそうなの、ちょっと一冊借りるわよ」
「…構わない」
そこで部室のドアが控えめに、ふとすれば聞き逃してしまいそうな微かなノックの音がした。そしておずおずとドアが開き、気弱そうなメガネの男性が顔を出した。
「何よ突然!敵襲なの!?キョン!迎撃しなさい!」
「ひいっ!や、やめてください!」
「お前はもうちょっと人の話を聞くって事を覚えろ」
それとハルヒ、お前が今投げつけようとしている本は長門の私物か図書館の本だ。
手に持った本を来室者に投げつけようとするハルヒを諌めつつ話を聞くと、来室者は隣のコンピ研のメンバーで、どうしても製作中のゲームの動作が上手く行かず、
長門の技能を貸して欲しいとの事だった。
「……」
なんでそこで俺を見る。
「いいよ、行ってこいよ、長門」
「……いいの?」
「ゲームだかなんだが知らんが、お前ならすぐ改善できるんだろ?こんなに困ってるんだ、ちょっと力を貸してやろうぜ」
「……了解した」
「ちょっと!何私を差し置いて勝手に決めてるのよ!有希を借りたいならSOS団団長である私を通しなさい!」
「お前はさっき話も聞かずに追い返そうとしただろ…」
「むっ…」
「そのお詫びの意味も込めて、長門の力をちょっとだけ貸してやってもバチは当たらないんじゃないか?」
ちらりと部室の机に鎮座しているパソコンに目をやりつつ
「すでに俺らは貰い過ぎなくらい貰ってるわけだしな」
「わかったわよ!仕方ないわね!」
ハルヒはまだブツブツと文句を垂れていたが、話がまとまったと見てとるやコンピ研はまるでお姫様をエスコートするように恭しく長門を連れて出ていった。
「まったくもう!」
怒りのままに勢い良く腰掛けられたイスが悲鳴を上げる。そいつはもういい年なんだ、頼むから丁重に扱ってやってくれ。
そのまま傍らにあった先ほどの本を手に取り読み始め、俺も何の気なしに積んであったそれらの本に手を伸ばす。
しかしアレだな、静かな環境での読書というものは睡魔を呼び起こすのに最適だといつも思う。そしてこんな場合のご多分に漏れず、俺は段々と眠りの世界に落ちていった。
「はぁ…凄いわねぇ…」
最後にハルヒが発した
「私も実際に見てみたいわー、人体の中…」
とんでもない発言を、聞き逃しつつ…




「……と!起きてよ!起きなさい!キョン!」
この台風のような女は、俺の数少ない平和な睡眠時間まで奪おうというのか?実は昨日は読み始めた漫画が面白くて、つい夜更かししちまったんだ、寝かせてくれ。
「寝直そうとするんじゃないわよ!大変なんだから!」
涼宮ハルヒという女がこんなに騒ぎ立てるというのは、本当にどうでもいい事か、本当に大変な事のどちらかしか無い。つまり…
「と、突然飛び起きるんじゃないわよ!危ないじゃない!」
飛び起きた俺の視界には一瞬何も映らなかった。より正確に言えば、目の前にあったはずの部室も机もパソコンも、その一切合財が消えてなくなっていた。
「どういう事だ…これは…」
「こっちが教えて欲しいぐらいよ!」
またハルヒの閉鎖空間に迷い込んだのだろうか?
だがそれにしては以前と雰囲気も違えば、『神人』とやらの姿も見えない。
床面はふわふわとしていて、布か何かの繊維のように感じる。遠くに目をこらすと、ぼんやりと何か大きなものがあるのが確認できた。
「何なのかしら……あの大きな建物みたいなもの」
「わからん……大きいのはわかるが距離が遠すぎて霞んでよく見えん」
「またキョンと二人で……これも夢だっていうの……?」
何かボソボソとひとりごとを呟いているハルヒを尻目に、俺は周りの状況を確認しようと立ち上がった瞬間、床のふわふわな物体の正体に思い当たってしまった。
だとすれば最悪だ、一体どうしてこんな事になった?
「どうしたのキョン……?顔が真っ青よ?」
「ハルヒ、落ち着いて聞いてくれ」
ハルヒと一緒に過ごしていく以上、ある程度の理不尽やとんでもない状況になっても覚悟を決めていたつもりだった。
だが、いくらなんでもこんな破天荒な状況は想定外だ。
「何よ突然…そんなに改まって…」



「俺達は、何らかの理由で豆粒みたいに小さくなっちまったみたいだ」



 自分でも何を言ってるのかと思う。正直このままもう一度昼寝を敢行すれば夢から醒めて、いつもの部室がちゃんとそこにあるんじゃないかっていう考えにすがりたくなってくる。
「何を突然言ってるのよ!そんな事あるわけないじゃない!?」
「いいか、まず俺達が立っている場所、床になんだか覚えがないか?」
そう、俺達はこいつに何度もお世話になっている。普段は物を載せるもんで、まさか自分がその上に載るとは夢にも思わなかったが。
「床っていったって……ただデコボコした絨毯みたいな……」
そこまで言ってハルヒの目が驚愕によって見開かれる。そう、こいつは発想や思いつきが一般人とかけ離れてるだけで、決して頭は悪くない。
「まさか……ここって……」
「そう、部室の隅の机においてある、お盆の上だ」
立ち上がって周りを見渡した時に気がついた。視界の端にちょうどお盆の縁と、その上にかかった薄い布の境界が目に入ってきたのだ。
「じゃあ、あの丸くて大きいのは……」
「俺達がよく飲む、お茶の茶筒だろう」
「向こうに霞んで見える、白くて大きのは……」
「おそらく、お前がいつも遊んでいるパソコンだろうな」
「何で…?どうしてこんな事になったの……?」
こっちこそさっきからお前に聞きたいのを我慢してるんだ。これは十中八九、いや九分九厘ハルヒのいつものアレに違いない。
だが原因究明の前に、俺達には更にとんでもない事件が待ち受けていた。



「あれー?今日は私が一番乗りなんですねぇ」



おそらく部室のドアを誰かが開けたのだろう、遠くからよくわからない轟音と、聞き慣れた声が響いてきた。
「みくるちゃんの声じゃない!取り敢えず気づいて助けてもらいましょう!」
ハルヒは飛び跳ねて全身で存在をアピールしながら大声を張り上げた。
「おーい!みくるちゃーん!ここよ!こっちよー!」
だが悲しいかな、そんな必死な叫びも朝比奈さんには届いていないようだった。



「うふふ、皆さんが居ないんだったら、こっそり仕入れた良いお茶を開けてみちゃおうっと」



「キョン、あんたも腹から声出しなさい!みくるちゃんに気づいてもらうのよ!」
そうしたいのは山々だったが、俺は立ち尽くしてしまい、どうにも声を出すことができなかった。
朝比奈さんが足音による轟音を立てながらこちらに迫る。怪獣映画も真っ青な迫力だ。
でかい、とにかくでかい。まるで山が迫ってくるみたいだ。今までも高い建物を見上げたことはあったが、今の朝比奈さんはそのどれよりも大きな気がした。
しかも俺達は机の上に居るのだ。もしも机の上ではなく床に居たのなら、朝比奈さんのご尊顔を拝むことは不可能に近かったかもしれない。
それほどまでに絶望的な大きさの差だった。

「朝比奈さーん!ここだ!気がついてくれ!」
ようやっと自分を奮い立たせ、なんとか声にすることができた。
だが、そんな努力も虚しく水泡に帰す事が起こってしまうのだ。



「ひゃあっ!?」



朝比奈さんの得意技、何もないところで転ぶというスキルがここで発動してしまった。
朝比奈さんはそのまますごい勢いでこちらに倒れこんでくる際、机に手をつこうと思い切り手をつきだした。
手の先には机があり、その上にはお盆があって、その上にはまるで小虫みたいな俺達が居たんだ。
お盆に朝比奈さんが手をついた際、勿論お盆の上には隕石が落ちてきたんじゃないかって衝撃が走った。
直接俺達の上に朝比奈さんの手が降って来なかったのは幸運としか言いようがない。朝比奈さんに潰されるというなら本望かもしれないが、生憎まだ生涯を閉じたくはない。
だがいいことの後には悪いことが続くもんだ。
そんな衝撃にさらされた俺とハルヒが無事なわけはなく、衝撃によって跳ね上げられた俺達は



朝比奈さんの大きく開いた口の中に飛び込んでしまっていた



「ひゅんっ!?」
朝比奈さんは突然口の中に飛び込んできた物体に驚き、そのまま喉の奥に当たった物体を嚥下してしまった。
「ふええ…何か飲んじゃいました…虫さんとかだったら嫌だなぁ…」
そうして俺らという小さな存在は、朝比奈さんという長い長い牢獄に囚われてしまったのであった…



 蠕動運動を体験するなんて経験、人生に二度はないだろう貴重な経験であろうが、二度目以降は御免被る。
巨大な歯に噛み潰されるという恐怖を味わうこと無く口内を通り抜けられたのは、果たして幸か不幸か。
手足を突っ張って抵抗しようにも、ぬるぬるとした肉のトンネルにするりとかわされてしまう。
そんな無意味な抵抗を繰り返しているうちに食道を通過したらしく、俺達は広い空間へと放り出されていた。今通ってきたのが食道であろうことは想像に難くない。
つまるところ、ここは朝比奈さんの胃の中なのであろう。
「一体……私たちはどうなったの?」
あまりにも突然のことで、悲鳴を上げる間もなくなすがままにされていたハルヒがようやく口を開いた。
「朝比奈さんに……呑み込まれちまったみたいだな……」
「どうするのよ!このまんまじゃ……」
『食べ物のゆくえ』が頭をよぎったらしく、ハルヒは戦慄しながら言葉を続けた。
「いくらみくるちゃんだったとしても、消化されるのなんてごめんよ!」
言うがいなやハルヒはぶよぶよとした肉の壁を蹴り始める。
「こら!みくるちゃん!出しなさい!出しなさいってば!」
「おい止めろ!ハルヒ!どうなるかわからんぞ!」
「だって他にどうしろっていうのよ!」
半ば半狂乱となりつつ肉の壁を乱打するハルヒ。当然だ、こっちは命の危機なのだから。
こちらが手を出しあぐねている間に、朝比奈さんがどうやら行動を再開したらしい。態勢を立て直し、歩行を始めたのであろう。
胃の中の傾きが変わり、定期的に振動が伝わってきた。




後編へ続く