幻想郷から少し離れた、三途の川のほとり。
おびただしく彼岸花の咲く野原に、ぐぅぐぅといびきをかいている少女が一人。
三途の川の渡し守、小野塚小町、その人。

そして、その側に咲く一輪の彼岸花の上に、ちょこんと乗ってその様子を伺う少年。
見た目は人間そのものの少年は、しかしてその大きさはゴマ粒ほどしかなく、良く良く注意しなければ気付かないほど。

―これは、とある彼岸の昼下がり、少年と死神が織りなす、「小さな小さな」お話―





小町がぐっすりと寝入っていることを確認すると、少年はいそいそと彼岸花を降り、小町の側に近づく。
少年にとっては、山のように巨大な小町の体。少年はそれをんしょんしょと髪の毛を伝いつつ登り、彼女の額の所に到達した。


額に登ってみても、そこから彼女の体の全景をみることは出来ない。
胸元に聳える山のような爆乳、それが邪魔をして腹から下を除くことが出来ないのだ。
服の隙間から見えるみっちりとした乳の谷間に、少年は思わずゴクリと喉を鳴らしたが、さすがにそこまでアタックする勇気は持ち合わせていない。


―まぁ、いいや。どうせこれから行くところも、「暖かく」て、「柔らかい」ところだし。


ふぅ、と諦め気味にため息をつくと、少年はそのまま額から顎の方へと下って行った。




傍から見たら、ゴマ粒ほどの小虫が小町の顔の部分を這っている。
もしこの様子を冥府の閻魔が見ていたら、慌てて払い落しただろう。
しかし、結局そのようなハプニングも無く、少年はようやく小町の口元へと辿り着いた。
普通のサイズからしたら、かわいらしいぷっくりとした唇。それが少年にとっては、ちょっとした土手のよう。ゆっくりとそこを頂上に向かって登って行くと、ぷるんとした唇に、だんだんと足が凹んでくる。
少年は足を取られながらも、唇が作る大きな割れ目、口の「入口」のところへと向かった。


そして、その硬く閉じられた唇に膝を着くと、少年は自身の口を拭う、そして、


―チュッ


ついばむように、彼女の口元にキスをする。少年の口を、いや顔全体を、小町の唇は跳ね返すような弾力と柔らかさで受け入れる。
その感触に興奮したのか、少年も貪るように彼女に口づけをする。何度も、何度も。


―相手が眠っていることなど関係無い。いや、むしろ、居眠りしている間を狙って、こうして死神のお姉ちゃんの唇を奪ってしまう。


若くして彼岸に来、そこで初めて覚えてしまった変態的な行為。それに少年は熱中してしまっていたのだった。





しばらく小町との口付けを楽しんでいた少年だったが、やがてそれにも飽きたのか、次の行動に移る。
少年は突然着ている服を全て脱ぎ捨てると、全裸になってしまった。そして、やおら唇の亀裂に手を突っ込んだ。


―ぐにゅ


両手に感じる柔らかな感触。そして、唇を刺激するように、ぐにぐにと両手を動かした。
その刺激は、まるで口元に異物があるかのよう。それを、彼女の口が感じ取らないはずが無かった。


―ぐぱあ…っ


まるで地割れのように、小町の口が開く。
真っ赤な口内に唾液の糸が何本も引かれ、それを受け止めるのはこれまた柔らかそうな肉厚の舌。
ゴマ粒しかない少年など、いとも簡単に捻りつぶせそうなその赤桃色の怪物は、唇に貼りついた「異物」を絡め取ろうと、ぬっと伸びてきた。


―むにゅ…


唇と舌に押し潰され、一瞬呼吸ができなくなる。
あっという間に唾液濡れになる少年を、小町の舌は抵抗するスキすら与えない。


―れろん


一回の舌舐めずりを終えて、再び小町は口を閉じ、寝息を立て始める。
しかし、先ほどまで唇にいた「虫」は、もうその唇の上には乗っていなかった。





口内に招かれた少年を、まずは舌のプレスがお出迎えする。


―ぎゅううううう!


小さな体でもしっかりと感じ取れる圧力と弾力。カメレオンのように折りたたまれた舌の中で、少年は押し潰される。
そして、そのまま味わうように、舌のサンドイッチは前後左右に動き始める。


―ずりっ、ずりっ


味蕾が擦れる音、唾液のぐちゅぐちゅという音、そしてたまに聞こえる、ごっくん!という喉を鳴らす音。
しかし、その嚥下音すら、少年の快感に恐怖を与えるものではない。すでに死んでいる少年にとっては、食べられることはそこまで大きな問題ではないのだ。
それよりも、今こうして舐られていることの快感を味わいたい…!ようやく舌のプレスから解放されると、少年はそのまま、舌の動きに乗って小町の丁度右頬のところへと移動した。


そこは、先ほどまで乗っていたところとまた違った様相を呈している。良く磨かれ、虫歯一つない臼歯。
うっかり噛み合わせてしまえばプチッと潰れてしまいかねないようなそこに、少年はよっと腰かける。そして、そこから目いっぱい手を伸ばし、舌に対してむにむにと刺激を与えていく。


―ゴゴゴ…


刺激を敏感に感じ取った舌が動き出す。右頬に少しずれるだけで、右の臼歯が一気に小町の舌によって圧迫される。
もちろん、巻き込まれるのは少年とて例外ではない。背中は硬いエナメル質、前は弾力のある舌筋に押し潰されてしまう。
と、右の方に異物を感じた巨大な舌が、ゴマ粒を絡め取ろうとずりずりと動き始める。上下に規則的に動く舌の動きは、少年の敏感な部分を攻め立てる。
一方、小町の方は眠りの無意識のうちにも若干イライラとし始める。ゴマ粒が舌では取れにくいところにあるので、何とか絡め取ろうと躍起になっているのだ。
だんだんと激しくなる舌の動き、もはや体の前半分は舌肉に埋もれた状態で、何度も何度も上下に擦られてしまう。
熱さで蕩けそうな空間と、その感触のダブルパンチに、性も未熟な少年が耐えられないはずがなかった。


(~~~~~!!!)


声にならない声を上げて、少年は思いっきり、劣情の詰まった液体を放つ。しかし、それも小町にとってはわずかなもの。苦みすら与えないものだろう。
快感に打ち震えながら、ようやく舌に絡め取られ、舌先へと運ばれる少年。と、次の瞬間


―グパアッ


眩しい光に、目がチカチカする。小町が口を開けたのだ。
それに続いて侵入してきたのは、大木のように太い彼女の指先。それに抗うことも無く、少年は唾液とともに貼り付けられ、口の外へと出される。
ねっとりと糸を引く唾液を見つつ、外に出されると、続いて目に入って来たのは小町の顔。半分眠っているのだろうか、寝ぼけた顔で指先に貼りついたゴマ粒を見ているようだ。
その、とろん、とした顔に、少年は何だか恥ずかしくなって目を背けてしまった。




普通なら、この後「ゴミ」として認識され、ぽいっと投げ捨てられて何事も無く終わってしまうところ。
しかし、今日に限っては少し趣向が違った。


「…う~」


小町が小さく唸り声を上げる。それも少年にとっては地響きのような声。そして、そのまま彼女は少年をポイ捨て…はしなかった。
少年を摘んだ指先はそのまま顔から下降し、ゆっくりと高度を下げ、そのまま…


―むに


突然、目の前が肌色一色になる。と同時に、柔らかな圧力がかかるのを感じる。初めての経験に、さすがに少年は戸惑ってしまう。
しかし、それと同時に、だんだんと高まる鼓動。もしかして、ここは…。




―ぐにゅ、ぐにゅ


目を半目にうすら開いて、自分の指先を胸の谷間に突っ込む小町。指先に生きている人間がいることなど気付きもしない。白い指先が乳房を圧迫するたびに、豊満でふくよかな乳肉が柔らかく変形する。
そして、一番乳圧がかかる場所で指先の侵入を止めると、そこに貼りついたゴマ粒を自身の柔肌に数回、むに、むに。
この「初めての」刺激に、少年が再び達してしまい、快感の中に気絶してしまったことも、小町にとっては知る由もないこと。
そのままゴマ粒を胸の谷間に残し、指先をスッと抜き取る。そして、何事もなかったように体勢を変え、小町は再びぐぅぐぅと寝息を立て始めた。




―思わぬハプニングで想い人に密着してしまった少年、そしてそれに気づかない死神。
―「小さな小さな」お話はまだ続きながら、彼岸の昼下がりは過ぎていく…








END?